もっと安全にヒーターを

 ※この記事はちょっと長いですし、少々面倒ですので、手間のかかることが嫌いな方には不向きかもしれません。クラウンローチを飼うのに必須の話題ではありませんので、必要と思われた方だけお読みください。

■はじめに 
 ヒーター(とサーモスタット(以下サーモ)は熱帯魚の生命維持に欠かせない重要な器具ですが、その故障による水温の異常な低下や上昇で大切な魚たちを失ってしまうことも残念ながら良くある事故です。工業製品ですから、ある程度の故障が起こるのはあり得ることですが、どうにもその確率が高いような気がして、メーカーには改善を望みたいところです。その一方で、壊れるものは壊れるものとして考えて、その被害を最小限に食い止めるとか、故障の確率を減らすような工夫もする必要があると思っています。魚たちを殺してしまってからでは、遅いですから。そういう意味での自己防衛的な対策を考えてみました。ただし、これを私がはじめたのは最近のことでして、長期的な検証作業などは行っていません(今使用しているので、検証中ですね)。さらに、理論上でのお話もあります。ですので、私からの提案と言うことで受け取っていたきたいと思います。それについてのご意見なども寄せていただけたら幸いです。ちなみに、今回は、ヒーターとサーモが分離できるタイプの保温器具で、サーモが現在主流の電子式の場合について考えてみます。
 それにしても、こういった事故はショックも大きいですし、悔しくてたまらないです。何とか無くなってくれることを祈りたいです。

■ヒーターとサーモの仕組み
 まずは保温器具の仕組みを簡単にヒーターとサーモに分けて説明しますね。

●ヒーター
 ヒーターは電気を通すと熱くなる。ただそれだけの器具だと考えて良いです。仕組みは簡単で、豆電球に電池をつないだら光りますよね。そして、ほんのりと暖かくなります。それと同じように、光があまり出ないかわりに、熱を多く発生するだけです。つまり、電気が通っている間だけ熱くなる、それ以外の時は熱くならないということです。そう考えると故障も単純なことが多く、中の配線が切れて、電気が通らなくなり、熱くならなくなる。と言うことになります。

●サーモ
 この器具はヒーターのスイッチだと考えるとわかりやすいです。ヒーターは電気が通っていると熱くなり、通っていないと熱くならないですから、そのスイッチをオンにしたりオフにしたりすることで、水槽を適当な温度にしています。
 サーモには温度計(センサー)がついています。普通はサーモから長いコードがついて出ている小さいキスゴムのついたものですが、それを水中に入れて使いますね。そのセンサーが水の温度を測る(測定温度)わけです。そして、サーモには温度を設定するダイヤルとか、つまみとかがありますよね。そこの値(設定温度)と測定温度を比較するんです。測定温度が、設定温度よりも低ければ、もう少し水温を上げたいので、サーモはヒーターのスイッチをオンにします。するとヒーターに電気が流れて熱くなり、水温も上がります。そのうち、測定温度が設定温度と同じになりますね。これ以上暖める必要はありませんから、サーモはヒーターのスイッチをオフにします。そうするとまた自然に水温が下がっていきますから、またヒーターのスイッチをオンに…という感じで常に測定温度と設定温度を比較して、ヒーターの電源をオンにしたりオフにしたりしているのです。これがサーモの仕組みです。
 サーモはヒーターほど単純な装置ではありませんので、故障の箇所や仕方も様々ですが、現象として二つの状況が起こります。サーモはヒーターのスイッチだと説明しましたが、そのスイッチが、オン(ヒーターに電気が通る)になったまま動かなくなる場合と、オフ(ヒーターに電気が通らない)になったまま動かなくなる場合です。オンのままになると、ヒーターは常に暖かいですから、水温は設定温度を超えて上昇し続けます。オフのままになると、ヒーターは常に冷たいですから、水温は設定温度よりも低くなっても、室温まで低下します。

■どんなふうにしましょうか
 まずはなにが必要なのかを考えてみましょう。水温の低下と上昇の直接の原因がヒーターやサーモの故障によるものとしますと、いくつかのパターンが考えられます。

@ヒーターが壊れた場合
 これはほとんどの場合、ヒーターに電気が通らなくなりますので、暖まらなくなり、水温が低下してしまいます。

Aサーモが壊れた場合(オフになったまま)
 これもヒーターに電気が通らなくなりますので、暖まらなくなり、水温が低下してしまいます。

Bサーモが壊れた場合(オンになったまま)
 これはヒーターに電気が通り続けますので、水温が上がり続けます。

Cサーモもヒーターも壊れた場合
 基本的にはヒーターが壊れると、電気が流れなくなりますので、これも水温が低下してしまいます。

こう考えると、水温低下のトラブルの方が、水温上昇のトラブルよりも多く起きそうな気がします。ですが、ちょっと考えてみましょう。
 ヒーターに電気が流れなくなると、水温は室温まで低下しますよね。そしてたいていの場合、人間が生活している部屋の室温は20度程度になっていると思います。夜などはその限りではないですが。ここで仮に20度程度で水温が維持できれば、多くの魚は調子を崩すかも知れませんが、死ななくて済みますね。つまりヒーターに電気が通らなくなることはよく起こるかも知れませんが、損害は小さいと思われます。特に夏場などはヒーターを入れない方も居るくらいです。次に水温上昇ですが、こちらの場合には沸騰までは行かないまでも、40度を越える状態にはなってしまうそうです。そして、40度の水温で生きていられる熱帯魚はほとんど居ません。こちらの事態が起きてしまった場合の損害はかなり大きいと言えるのではないかと思います。
 これらのことを考えると、なんとなく水温上昇の対策をしたいなと思いますね。ということで、今回はまずは、Bのサーモが壊れた場合(オンになったまま)の対策をメインに据えてみたいと思います。


図1:サーモを二つつける


図2:サーモに温度固定式ヒーターをつける
 方針は決まりましたが、具体的にどうしようかと考えたときに、まずは思いつくのが、サーモを二段階にする方法(図1)です。サーモ1とサーモ2を用意します。そして、サーモ1で本来はヒーターをつけるところにサーモ2をつけます。そして、サーモ2にヒーターをつなぐのです。そうすると、例えばサーモ1が壊れてずっとオンになってしまっても、サーモ2が動いていれば、そちらで水温上昇を抑えてくれますので、一つの時よりも信頼性が上がりそうです。でも、実はこれには欠点がありまして。サーモのヒーターをつなぐところには、ある程度の電気を使う器具をつなぐ必要があります。それがついていないとサーモが正常に働かない仕組みになっています。そして、普通のサーモはサーモ自体ではそれほど電気を使いませんので、この接続ですと、サーモ1が正常に動かず、いつまでたってもヒーターに電気が全く流れない状態になりかねません。そこで、サーモ2を改造したり、途中に電気を使う器具をつなぐなどの対策をとられる方も居るようですが、それは専門的な知識がいりますし、なによりも改造してしまったら、信頼性が落ちる可能性があります。ですので、この方法ではダメですね。
 ということで、いろいろと考えたのですが、普通のサーモに、温度固定式(サーモ内蔵型)のヒーターをつなげて、2段階のサーモを実現してはどうかと考えました(図2)。ということで、早速用意です。

■お買い物
 お買い物と言うよりも、今回使う器具の説明です。

●サーモスタット(3000円くらい)
 元々は150ワットのヒーターがセットになって売っていたものです。そこからヒーターだけをはずして、サーモの部分を利用します。接続できるヒーターの容量は150ワットです。だいたい、60センチ以下の水槽用に売られています。

●温度固定式(サーモスタット内蔵型)のヒーター(1280円×2)
 今回は75ワットの温度固定式(25.5度で上下1.5度の誤差)のヒーターを2本用意します。合わせるとちょうど150ワットです。なぜ2本かと言いますと、60センチ水槽ではヒーターが150ワットは欲しいのですが、1本で150ワットの温度固定式ヒーターが見つからなかった(そして高かった)からです。注意点として、2本をなるべく同じ温度で固定されているヒーターにすることと、合計がサーモスタットの容量を超えないことです。

●テーブルタップ(100円)
 これは100円ショップで買ってきました。一つのコンセントを二つ以上に分けることができればなんでも良いです。

買い物はこれで終わりです。


■作り方
 といっても特にありません。左の写真のように接続します。サーモのヒーターをつなぐところに、テーブルタップをつけまして、それに2本の温度固定式ヒーターをつなぎます。写真で長さが違うのは、撮影の時には1本を別のところですでに使っていたからです(笑)。あまり気にしないでください。接続方法だけわかればよいですから。このように接続しまして、ヒーター二本とサーモのセンサーを水槽に設置します。そして、ヒーターなどが水面から出ていないことを確認したら、サーモをコンセントに接続して動かします。水温が設定温度(このときには24度)よりも低ければサーモのランプがつきまして、ヒーター周辺の水が揺らいでいるのが見えましたので、電気が流れていることが確認できます。また、このまま放置しておくと、24度になったところでサーモのランプが消えまして電気が止まったのがわかります。


■これで良いと思われる理由
 こうして紹介したのですが、どうしてこれで温度上昇のトラブルを少なくできるのかと言いますと…。
 上で少し説明しましたが、サーモを2段にすることで、信頼性を上げることができるのです。ですが、電気をあまり使わない普通のサーモでは2段にするのが難しいといいましたね。ですが、温度固定式のヒーターは、それ自体はヒーターですから、普通のヒーターとして電気を使うのでサーモも普通に動くようです(少なくとも、今回のニッソーのサーモとGEXの温度固定ヒーターのセットではそれを確認しました)。また、サーモが壊れて電気が通りっぱなしになったとしても、温度固定式のヒーターはある一定温度になったら、それ以上に温度が上がらないようにできています(サーモがヒーターに入っています)ので、温度上昇を防げるわけです。これで、2段式のサーモをつないだのと同じような信頼性の向上を図ることができると思います。また、今回は高いワット数の温度固定式ヒーターが見あたらなかったために、低いワット数のヒーターを二つつないでいます。これによって、一つのヒーターが壊れた事による温度の低下をある程度カバーできますので、温度低下に対する多少の対策にもなっていると思います。そういう意味では、二つになったのも良かったのかなと思っています。


■問題点など
 最大の問題点は、温度固定式ヒーターの温度以上に水温を上げることができなくなるということです。多くの温度固定式ヒーターの水温設定が25度程度ですから、普通に魚を飼育するには特に問題は出ませんが、白点病の治療などで温度を上げるとか、高温での飼育が常識化している魚などには使えません。また、高いワット数の温度固定式ヒーターはあまり売っていないので、どうしても低いワット数のヒーターをたくさんつけることになりがちですから、コストが多少割高になるかもれません。あとは、配線が少しごちゃごちゃしますね。また、サーモが直列に2段階という事は温度の上昇事故の対策にはよいですが、低下対策としては逆効果です。サーモという壊れる可能性のあるものが二つもついていますと、片方でもオフの方に壊れてしまうと、それでヒーターに電気は流れなくなってしまいます。今回は2本の温度固定式ヒーターを使っていることで少しはよいですが、それでも心配でしたら、これを2系統用意するなどしてもよいかと思います。といってもそれを言い始めるときりがない話なのですが…。
 そして、私もこの方法をはじめたばかりですから、長期的にこれで温度を一定に保てるのかどうかの検証がまだできていませんので、これは、提案として見てください。 

■最後に
 今回はサーモの事故による水温の異常上昇への対策として考えてみました。また、ヒーターを二つにしたことで、ヒーターの故障による水温低下のトラブルにも多少は対応できるものと思います。ですが、やはりメーカーにはもっと信頼性のある製品の供給をお願いしたいところですし、私たちもヒーターを早めに取り替えるとか、サーモスタットをほこりのあるところで使わないなどの手入れもしっかりとしていきたいものです。

■ご注意
 このHPの全てのコンテンツに言えることなのですが、試すときはご自分の責任でお願いしますね。特に今回は水温のお話ですし、電気のことでもありますし、魚の生命維持、火事などの事故に十分気をつけて、慎重にお願いします。

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